ラ・フランスの旬に関わる、生産量日本一の「洋梨王国」山形県の取り組みとは?

ラ・フランスの旬に関わる、生産量日本一の「洋梨王国」山形県の取り組みとは?

洋梨の産地といえば山形県です。
特にラ・フランスに関しては圧倒的なシェアを誇っていますが、それは山形県が一体となってラ・フランスの品質向上に取り組んできた結果ともいえます。
そのひとつに「ラ・フランス販売開始基準日」というものがあります。県内の生産者の方々がより美味しいラ・フランスを食べてもらうために設定したものですが、これによって山形県産のラ・フランスの出荷の時期が決められて品質が保たれるという仕組みになっています。
この品質を保つ考え方は現在では全国的に広がり、おいしく食べられるラフランスが現在ではたくさん流通しています。
今回はラ・フランスの旬の時期に関わるこの制度についてご紹介していきましょう。

日本に来たからラ・フランスは絶滅を免れた?

ラ・フランスはその名の通り、フランスで発見された洋梨の一種です。

食べてみたところ非常に美味しかったため「これこそフランスだ!」と感動して「ラ・フランス」という名前が付いたと言われています。
ただし、ラ・フランスや西洋なしと呼ぶのは日本だけで、フランスでは発見者の名前Claude Blanchet(クロード・ブランシェ)が品種名となっています。

ラ・フランスが日本に入ってきたのは1903年(明治36年)ですが、山形県には樹齢100年を超えるラ・フランスの木があるので入って間もなく栽培が始まったと考えられます。
ラ・フランスは寒冷で湿度の高い場所で良く育つ性質があり、東北や信州に向いている果物でした。
また山形県は山に囲まれて台風などの被害に遭いにくいという理由から多くの農家でラ・フランスが栽培されているそうです。

なんと本家フランスではラ・フランスは一度絶滅してしまいました。

その後1991年(平成3年)に山形からフランスに苗木が送られて、現在ではフランスでも栽培が行われるようになったそうです。日
本以外で盛んに生産しているところはありませんので、もし日本に来ていなかったらラ・フランスは地球上から絶滅していたかもしれませんね。

日本のラ・フランスの生産量

農林水産省が発表している「特産果樹生産動態等調査(平成30年産)」の情報によると、ラ・フランスの生産面積は日本全国合わせて867.5ヘクタールです。

県別の生産面積ランキング

1位 山梨県 734.9ヘクタール
2位 長野県 41.3ヘクタール
3位 青森県 31.9ヘクタール

フルーツ生産がさかんな地域がランクインしています。
1位の山梨県が全体の80%を占めているため、様々な基準を設定し、よりおいしいラフランスをお届けする取り組みを先立って行っているようです。

洋梨独特の熟成方法「追熟」

洋梨独特の熟成方法「追熟」

ラ・フランスに限らず、洋梨は木に成ったままでは熟さないという特徴があります。

収穫後に常温保管すると約2週間で完熟しますが、この常温での熟成期間を「追熟」と言います。
しかし、ラ・フランスは熟しても皮の色が変わったりしないので食べ頃がとても分かりにくいという欠点がありました。
グルメブームに乗ってその美味しさや認知度が高くなる一方で、完熟の見分け方が良く分からずに「ゴリゴリして美味しくない」という評判が出かねない状態があったのです。

ラ・フランスを美味しく食べてもらう取り組み

ラ・フランスを美味しく食べてもらう取り組みについてご紹介します。

1)予冷と追熟の徹底

消費者がラ・フランスを手に取った時、美味しい状態であるようにするための仕組みが「予冷」です。

予冷は収穫後に2~5度の低温貯蔵庫に10日ほど保管してラ・フランスの呼吸を抑制することを言います。呼吸を抑えると追熟も止まりますので、バラバラだった熟成状態をケースで揃えることが可能になりました。
そして出荷前に追熟を行い、熟成して傷みやすくなるぎりぎりの状態で果実を発送しています。

このように管理することで、品質が安定し「硬くてまずい」という事を防ぎ、おいしい状態で消費者にお届けできるようになりました。

2)販売開始基準日の設定

山形県には生産者が産地で追熟したラ・フランスを消費者が購入できるシーズン最初の日を設定しています。これが「販売開始基準日」です。令和3年は10月25日(月曜日)でした。
販売開始基準日は山形県の生産者が予冷と追熟を確実に行って、お客さんがお店でラ・フランスを手に取った時に美味しい状態を保証できる日になります。

果物は気候などによって成長の時期が変わるので、この販売開始基準日も年によって変わります。

3)地理的表示(GI)保護制度の取得

地理的表示保護制度とは、生産地の気候や土壌などがその作物の特性と密接に関係があり、その関係を財産として保護しましょうという取り組みのことです。
この保証制度に登録されたことで山形県のラ・フランスは「山形ラ・フランス」という名前で販売できるようになります。同時にその品質を保証する義務が生じるため、厳しい品質管理を行っているのです。
実際には「山形県「ラ・フランス」振興協議会」が指導などを行い、基準を満たしているラ・フランスだけが「山形ラ・フランス」の名称とGIマークを付けることが許されています。

ラ・フランスの旬はいつ?

ラ・フランスの旬はいつ?

ラ・フランスの80%以上を生産している山形県の販売開始基準日が、実質ラ・フランスの旬の始まりと言っていいでしょう。
収穫の時期は10月から11月にかけて行われ、出荷は10月から12月頃までとなりますが、一番多く市場に出回るのは11月頃になります。

ラ・フランスは買ってすぐに食べられるの?

GI表示があるものはおおよそ買った時から美味しく食べられると考えられますが、輸送や店舗の管理状態などで微妙に変わってくる場合があります。

また山形県「ラ・フランス」振興協議会は発足して間がないため、全ての生産者が加入している訳ではありません。
他県でも生産されていますので、スーパーなどで購入する場合には自分で食べ頃かどうかを判断する必要が出てきます。

ラ・フランスの見分け方

ラ・フランスは色で完熟を見分けることができないので、完熟かどうかを見分けるポイントを知ることが大切です。
そのポイントは大きく3つあります。

①ラ・フランスの頭の部分に細かいシワができている
②シワの部分を押すと果肉がふにゃっと柔らかい
③軸(木の部分)が枯れ枝のようになっている

この3つの全てに当てはまった頃が食べ頃です。

産地直送などで購入すると食べ頃の目安が記載されていることが多いようです。

ラ・フランスの保存方法

ラ・フランスの保存方法

完熟したラ・フランスはポリ袋などに入れて冷蔵庫で保管します。
野菜室があればそちらの方がいいでしょう。
完熟後は持って1週間程度ですので、なるべく早く食べきるようにしてください

すぐには食べきれないという時は冷凍しても美味しく食べられます。
半分に切ったり、りんごのようにくし切りにしてからひと口大にさらに細かくし、保存容器や保存袋で冷凍庫に入れると果肉がシャーベットのようになりまた違った美味しさを楽しめます。
冷凍すると1ヶ月ほどは持ちますのでおすすめです。

なお、完熟ラ・フランスは非常に果肉が柔らかく、果汁が桃のようにとろりとしていますので、切ってから皮をむいた方が楽にむけますよ。

まとめ

今回は山形県の取り組みについてご紹介しましたが、GIマークがなくても真摯にラ・フランス作りをしている生産者の方はたくさんいます

特に農園などで直販をしているところでは一番美味しい時期にラ・フランスを食べてもらいたいと工夫をしている場合が多いですので、店舗で買ってもうまく見極めができないという場合は通販を利用してみてはいかがでしょうか。