お知らせ

2021.10.18

市田柿ができるまでの一年 干し柿の作り方をご紹介

長野県南信州の特産品である市田柿をご存じですか?
10月に入ると南信州のいたるところで橙色の柿の実が緑色の葉の中に際立ってきます。一年かけて栽培してきた柿の実をいよいよ収穫し、干し柿へと加工していくシーズンの到来です。
半世紀ほど前は、家族総出で柿の皮を剥き紐に吊るす光景がありました。現在は栽培管理、衛生管理もしっかりされ、栽培履歴の提出や加工所や干場が規定に沿っていないものについては市田柿として出荷できないとされています。
ギフトに最適な南信州の市田柿の作り方をご案内します。

市田柿の春夏秋冬

市田柿の栽培は、JAの指導のもと剪定、消毒、摘果、収穫時期などが管理され、栽培履歴をその都度記入して出荷前に必ず提出することとされています。
放っておいても柿の実はなりますが、手を入れないと干し柿に適した柿の実にはなりません。

最初に柿の実の栽培から収穫までをご紹介します。

  • 2月 まだ寒い中での剪定作業
  • 4月 輝く緑の芽吹き
  • 5月 清楚な白い花を咲かす柿の花
  • 6月 柿の実の誕生
  • 8月 実の大きさを決める摘果作業
  • 10月 熟度を見極めて柿の実の収穫

 

柿の実のなり具合を左右する剪定作業 2月 

干し柿の出荷が終わり、ほっとする間もない2月、次の年の柿の実のために剪定作業が行われます。
枝の切り方によって実のなり具合が変わってくる大事な作業です。
ただ飛び出ている枝を切り落とせばいいというわけではなく、疲れていそうな枝を見極めることが大切になります。そして、各年の状況をみて多めの剪定をしておくか、少なめに剪定しておくかを柿畑によって変えていきます。その年の柿のなり方だけでなく、2~3年先のことまで考えて枝を切っていきます。

 

新緑の季節の芽吹き 3月下旬~4月

光沢のある黄緑色の葉っぱが芽吹きます。
柿は桜と違って葉が先に芽吹き、そのあと花が咲きます。
この時期、一番心配なことが「霜」です。1~2年前でした、4月に遅霜が降りて一部の柿畑は新芽が凍り真っ黒になってしまったところを見たことがあります。その後は枯れ落ち、その年は柿の実がならなかったそうです。
写真は5月の柿の木の様子ですが、このように生き生きとした葉っぱに成長してくれると一安心ですね。

 

清楚な白い花を咲かす柿の花 5月下旬~6月上旬

市田柿の花は大きな葉っぱの影に清楚な白い花を咲かせます。
とても命が短く、一週間ほどで茶色くなってぽとりと下へ落ちてしまいます。

実は私も、気にしていなかった頃は「柿の花なんて咲くの」と思っていました。今でも「この花なぁんだ?」って写真を見せても知らない人のほうが多いです。でもとってもかわいい花なんですよね。今では毎年5月の終わりになると柿の花を観察するようになりました。
誰にも気にされずにぽとりと落ちてしまうなんてかわいそうですもんね。
近くに柿の木があったら、ぜひ白い花を探してみてください。

 

柿の実の誕生 6月

花が終わると、落ちた花の下から柿の実の赤ちゃんが生まれます。干し柿のホゾとなる額の間に四角い柿の実ができていますね。

この時期は、梅雨にはいる少し前ですので天候も落ち着き柿の実の成長にはとても良い季節です。多少の雨が降ってくれると柿の実の成長に良い影響を与えてくれますね。
ピンポン玉くらいの大きさになるまでは見守りの期間となります。

 

柿の実の大きさを決める摘果作業 7月下旬~8月上旬

梅雨の間に直径4~5センチに成長した柿の実。真夏の暑さの中で摘果作業が行われます。
摘果作業とは、柿の木の枝にいくつの実を残すかを決めて余分な実は切り落とす作業のことをいいます。

干し柿に適した柿の大きさは約80g~110g。この大きさになるように摘果作業で調整します。多くの実がなっていると実は小さくなり、少ないと大きな実になります。また柿の木によって、柿畑によっても、水分量や栄養、日当たりなどの条件により柿の実の成長が変わってきますので、その柿畑の管理経験によって見極めて干し柿に適した大きさになるように摘果するのです。
大きくてもダメ、小さくてもダメ、この作業にも熟練の判断が必要となります。

 

熟度を見極めて柿の実の収穫 10月下旬

柿色になる10月。日当たりのいい南側から色づいてきます。緑色の柿の葉と柿の実のコントラストがとてもきれいです。

柿色に色づいてくると収穫が待ち遠しくなりますが、ここでも良質の干し柿を作るためには熟度を見極めることが大切になります。遠くから見ると良さそうな橙色に染まっていますが、まだホゾの近くは肌が緑色をしています。しっかり成熟した柿を使用することで甘く黄金色の干し柿に加工することができるわけですから、この収穫の時に慌ててすべてを収穫してしまうと、青みかかった生柿を収穫してしまうことになってしまいます。
こここそ見極める経験と判断がとても大事になってきます。

 

こうして一年かけて育ててきた柿の実を、11月から約1ケ月かけて渋柿から甘い干し柿へ加工していきます。

 

渋柿から甘い干し柿へ 市田柿の作り方

甘い干し柿である「市田柿」の原料は渋柿です。
渋柿がなぜ甘くなるのか? 干し柿の白い粉は何なのか? 市田柿の作り方を知っていただくとわかってきます。

  • 柿の実の選果作業
  • 生柿の皮を剥く
  • 硫黄燻蒸
  • 柿のれんに吊るして干す
  • 揉む
  • 袋詰め、箱詰め、出荷

 

収穫された柿のみは大きさ別に選別

良い柿色に熟した柿の実を木からもぎ取り選果を行います。

大きさ別はもちろんのこと、病気はないか?熟度は適しているか?などを見ながら選別していきます。全てを自社で栽培している柿ばかりではなく、地域の農家さんが育てた柿の実もあるため、生柿の選別の段階で干し柿に適さないものは排除していきます。

 

柿の皮を剥く

一つ一つの柿の皮むき作業です。機械に乗せると自動的に皮を剥いてくれるので、今はとてもこの作業が効率的になりました。半世紀ほど前、各家庭で干し柿を作っていたころは針にさして右手でハンドルを回し、左手でピーラーを動かすという道具を使い手動で皮を剥いていました。その前は包丁で剥いていたころもあるそうです。
この作業が一番手間のかかる作業ですね。

柿の収穫は約1週間ほどですべてを採り終えます。選別されて皮を剥くまで温度管理された保冷庫で保管されますが、日に日に熟度は増してきますから、1日も早く皮むき作業を進めなくてはなりません。自動皮むき機で1日に約50コンテナを処理します。柿の実の数でおおよそ10,000個!!単純計算で1分間に約20個剥いていることになります。
自動皮むき機があるからできることですね。
たぶん、包丁で向いたら1分間に1個剥けるかどうかです。

 

硫黄燻蒸とは

市田柿の原材料には「二酸化硫黄」と表示があります。
硫黄と聞くと何か体に影響があるのでは?と心配になるかたもあるかと思います。

市田柿になぜ硫黄燻蒸を行うのか、またどのように二酸化硫黄が使われるのか、簡単に説明しましょう。
硫黄燻蒸を行う理由は3つ、①干し柿の酸化を防止してきれいな色に仕上げる。②制菌作用によりカビなどを抑制する。③干し柿の乾燥を促進する。
方法としては、少量の硫黄の粉を燃やし、その中へ皮を剥いた柿を入れて燻煙します。その煙が柿にいきわたることで効果が得られます。決して硫黄そのものを振りかけたり、溶かした水に柿を浸けるなどのことはしていませんので、体には影響のない程度の制菌効果を得るために使用しているものです。

 

柿のれんに吊るして干す

次に、皮を剥いた柿を「柿のれん」という紐に吊るして干します。
以前はこのゴムの器具がついていない水糸にクルクルとひっかけて干していました。私の母は手早くその作業をしていましたが、早すぎてどのように括り付けていたのか?未だにわかりませんが、何も部品がないただの水糸にクルクルっとするだけなのになぜ落ちないのかがとても不思議だったことを今でも思い出します。そのころの農家さんの技術だったのでしょうね。今はもう、こうした黒いゴム製の器具がついているので、上から差し込んでグイっと下へ下げれば落ちません。

この時期は各家の軒下に柿が吊して干されている光景を「柿のれん」と言われ南信州の風物詩となっていました。
今は、衛生的にも外に干すことは禁止され、作業場やビニールハウスの中へ干すこととされているので、あまり柿のれんの風景は見ることができなくなりました。自家製で干し柿を作っている家には軒下に干されているところもあります。

柿が干されると、どこからともなく柿の匂いが風に乗って流れてきます。

 

干すことで甘くなるのはなぜ?

冒頭でご案内しましたが、干し柿の原料は渋柿です。原料の生柿をかじるととんでもない渋さです。もう何も味を感じられなくなるんじゃないかと思うくらい口の中がしびれたようになります。では、どうして渋柿があんなに美味しい干し柿になるのでしょう?

まず、渋みのもととなるのはタンニンでポリフェノール一種です。

干すことで「渋みが消える」と表現しますが、ポリフェノールの一種なら消えてなくなってしまったら残念ですよね。ご安心ください、渋みは消えてなくなるのではなく隠れてしまうのです。
生の時は溶性、つまり溶けやすい素材ですので口に入れると溶けて渋みを感じます。しかし、干して乾いてくると不溶性に変わり、口の中へ入れても溶けずに体内へ入っていきます。ですから渋みを感じなくなるということです。
栄養素はそのままに美味しく食べられるようになるなんて、よくできてるなぁと思います。

 

 

揉むと現れる白い粉

「柿に付いている粉砂糖をいただけませんか」という問い合わせがあったと聞きます。申し訳ありませんが、柿に付いている白い粉はまぶしているのではなく、柿の中から出てきた糖分が結晶化したものです。
干すことで水分が乾いた柿をゴロゴロと機械で回転させ「揉む」という作業を行うと、残っていた水分と一緒に出てきた糖分が乾いて柿の実に纏います。

あまり水分が多い状態で揉み作業に入ると、一度纏った糖分がまた溶けてしまうこともあり、乾燥状態がどの程度になればいいかをよく見極めなけばなりません。乾き過ぎていても、今度は中から糖分が出て来なくなってしまい粉がきれいに纏わなくなってしまいます。ちょうどいい状態で均一に粉が纏うととてもきれいな干し柿が仕上がります。

 

こうして一つ一つに手間をかけて仕上げた市田柿を、大きさ別に選別し、粉の均一性や色を見て「特秀」「秀」「優」「規格外」と分けられ、「特秀」「秀」「優」は市田柿として出荷ができますが、「規格外」については市田柿と名乗ることができず干し柿として販売されるか加工品の材料になります。

 

地理的表示(GI)登録

市田柿は地理的表示(GI)登録されています。長野県南信州で生産加工された証です。

  • 地理的表示(GI)保護制度とは
     地域には長年培われた特別の生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品が多く存在しています。これら産品の名称(地理的表示を知的財産として保護する制度が「地理的保護制度」です。
  • 市田柿の登録
     農林水産大臣登録第13号
     生産地の範囲は、長野県飯田市・長野県下伊那郡(高森町・松川町・豊丘村・喬木村・大鹿村・阿南町・阿智村・売木村・下条村・天龍村・根羽村・平谷村・泰阜村)・長野県上伊那郡(飯島町・中川村)で生産され、加工方法や出荷規格など市田柿としての条件が厳しく管理されます。
  • 類似品にはご注意を
     市田柿は、この地域に合った方法で生産加工されて販売されます。GIマークの付いた市田柿は本物の証です

 

 

 

ココロファームの市田柿

ココロファームの市田柿は次のような識別で販売しています。

  • 贈答品 白箱「特秀」LL 20個入、10個入
     …個包装された市田柿を洋菓子のような白い貼り箱に上品に並べました。
  • 贈答品 黒箱「秀」L-LL  700g、500g
     …トレーに市田柿を20個~25個並べて1パックに包装され黒箱に入っています。
  • 自家用 袋入 大きさは混在 300g
     …少し色が悪かったり、粉が均一でなかったり、シワがあったりしますが、加工方法は同じです。

市田柿はギフトとして大変喜ばれており、御歳暮・御年賀にぜひご利用くださいませ。

 

ご家庭での干し柿の作り方

自宅で干し柿を作りたいという方もいらっしゃると思います。

さて、どうやったらご家庭で上手に干し柿を作ることができるのでしょうか?

簡単に作り方をご案内しましょう。

用意するもの

  • 渋柿 …作りたいと思う量をご用意ください。
  • 皮を剥く道具 …ピーラー、包丁、りんごの皮むき機などご家庭にあるものでよろしいと思います。
  • 紐  …縄などのように捩ってある紐が良いと思います。
  • 物干し竿 …吊るした柿を干すところをご用意ください。軒下、ベランダなど。
  • 熱湯 …鍋にお湯を沸騰させておいてください。
  • 紙袋 …干し終わったあと、一時的に保管します。

それでは作り方のご説明

 ①渋柿の皮を剥きます。
  注意することは、紐に引っ掛けるためにホゾについている枝は切り落とさないでくださいね。

 ②熱湯で煮沸消毒します。
  皮を剥いた渋柿を沸騰したお湯の中へ30秒程度いれて取り出します。
  全ての渋柿を煮沸消毒してください。

 ③紐に吊るします。
  捩れている部分を少し広げ、柿のホゾの部分を差し込んで戻すと落ちないと思います。
  吊るしてから煮沸消毒を行っても良いですね

 ④軒下やベランダの風通しの良いところに干します。
  約3週間ほど干すと渋みを感じなくなると思います。

 ⑤干した柿を下ろして紙袋に移します。
   そのまま寝かしてもいいですし、袋の中で柿と柿を擦り合わせるように揉むと中から糖分が出てきて白くなってきます。

 ⑥保存は密封袋に入れてれ、なるべく空気を抜き、冷蔵庫で保存します。
  長期保存は、同じように密封袋に入れて空気を抜き、冷凍庫で保存しましょう。

 近年の冬は気温も高めであったり、室内の暖房によって暖かくなって来ていますので、保存は必ず冷蔵庫へ入れることをおすすめします。

 

販売する市田柿は厳しく衛生管理されています

40~50年ほど前の市田柿は、各農家さんのお宅で加工され、11月には至るところで軒下の柿のれんが見られ、12月はコタツに入って家族全員で市田柿のパック詰めを行う光景が見られていました。
しかし、市田柿が「果物の加工食品」に分類されることにより、皮むき作業場、干し場、揉み場などの加工作業所の衛生管理を厳しく行うことになりました。干し場は天井があり、周りがきちんと囲われていること。作業場は専用の場所とすること。専用の作業着を着用すること。など食品衛生法に準じて衛生管理を行うこととされています。

販売商品にも品質表示、成分表示が記載されています。
また、「市田柿」は地理的表示登録をされていますので、その条件にあった栽培方法と加工方法を行ったものにだけ「GI」マークが貼付されています。本物の証を確認の上、ご購入くださいませ。