新潟発祥!西洋梨の貴婦人「ル・レクチェ」の食べ頃と保存方法は
新潟県発祥の洋梨「ル・レクチェ」。
一度食べたら忘れられない美味しさですが、生産量が非常に少なく「幻の洋梨」とも呼ばれています。
栽培も難しくなかなか手に入らないので食べたことがない、名前も聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか。
今回はル・レクチェの歴史から美味しさ、食べ頃までご紹介します。
ル・レクチェってどんな果物?
ル・レクチェは洋梨の一種です。
洋梨と言えばラ・フランスが有名ですが、ル・レクチェは知る人ぞ知る「とろけるような甘味」と「芳香」を持つ高級品なのです。
生産量が少ない希少な品種のため「幻の洋梨」「西洋梨の貴婦人」「妖艶の果実」などと呼ばれることもあります。
洋梨らしい「しもぶくれのティアドロップ型」をしており、表面に斑点(さびといいます)が少なくツルンとした見た目で、食べ頃には濃い黄色になります。
多くは食べ頃に合わせて出荷されているので黄色いル・レクチェを見かけることがほとんどではないでしょうか。
大きさは300~400gくらいですが、中には500g以上あるものもあり、主に贈答用として利用されています。
ル・レクチェの歴史
ル・レクチェは1882年にフランス中部にある都市オルレアンで、園芸家オーギュスト・ルによって作られました。「バートレット」と「フォルチュネ」を交配させた品種と言われていましたが、遺伝子鑑定の結果、バートレットとは親子関係がないと判明したそうです。
ル・レクチェという名前は17世紀の果樹園芸家ル・レクチェエ氏にちなんで1889年に付けられました。余談ですがオルレアンはフランス革命(1789年~1795年)で処刑されたオルレアン公が治めていた土地であり、ジャンヌ・ダルクが活躍した都市としても有名です。
日本でのル・レクチェの歴史は、1903年(明治36年)に新潟県在住の庄屋・小池左右吉さんがフランスから苗木を取り寄せたことから始まります。
前年にロシアのウラジオストクへ旅行した小池さんがこのル・レクチェと出会い、栽培しようと考えました。研究にいそしみ、なんとか栽培方法を見つけ出して近隣農家にも広めたことが発祥とされています。
しかしフランス中部のオルレアンから日本からも遠くないウラジオストクまで、ル・レクチェが伝わっていたこともちょっとビックリですね。
ル・レクチェは栽培が難しい?
ル・レクチェが誕生したフランスでは、現在栽培は行われていません。
ル・レクチェはもともと病気に弱い品種のうえ、成った実が風で落ちたりしやすいという特徴があります。洋梨特有の追熟にも時間がかかるため、より広い場所が必要になってきます。
「西洋梨の貴婦人」とまで言われる美味しさでも、手間の多さが敬遠された結果かもしれませんね。
そのため、パリの一つ星レストランで新潟県産のル・レクチェが料理業界の関係者に向けて提供されたという話もあるほどなのです。
ル・レクチェは「隔年結実」といって毎年実をつける訳ではありません。
このため授粉は人の手によって行われます。非常にデリケートな果物なのでひとつひとつ袋をかけて大切に育てられます。
本当に手間がかかっていますよね。
ル・レクチェの一大産地は新潟県
ル・レクチェの栽培が最も盛んなのは新潟県です。
最初の生産地でもあり、栽培に非常に適した土地であったことから、ル・レクチェは新潟県の特産果実となっています。
農林水産省発表の『平成30年産特産果樹生産動態等調査』を見ると、ル・レクチェの栽培面積は全国で131.1ヘクタールですが、そのうちの105.9ヘクタール(80.8%)が新潟県に集中しています。
ちなみに最も栽培されているラ・フランスの生産面積は867.5ヘクタールなので、ル・レクチェの生産面積も生産量も少ないことが良く分かります。
それでもその美味しさから栽培面積は拡大しており、長野県・山形県・福島県などでも生産されるようになっています。
なお、新潟県では「ル レクチエ」という名前で統一されていますが、「ル レクチェ」「ル・レクチェ」といった表記もされています。
ル・レクチェの予冷と追熟
ル・レクチェも洋梨なので樹上で熟さないという特徴があります。
出荷日を分かりやすくするために、収穫したル・レクチェはすぐにひとつひとつ包装がかけられ、呼吸を止めるために低温保管庫に入れられます。
これを予冷と言います。
その後、常温に戻すと一気に熟成が始まり時間をかけて完熟していきます。
こちらの工程が追熟です。
洋梨の予冷と追熟は大体みんな同じですが、ル・レクチェは追熟時間が非常に長いのが特徴です。
その期間、なんと40~45日!一か月以上も放置することになるので管理する方々はドキドキではないでしょうか。
実際、追熟中に傷んでしまい商品にならないものも発生します。
収穫量=出荷量とならないところがル・レクチェをさらに希少なものにしていると言えるでしょう。
「幻の洋梨」は伊達じゃない!その美味しさの秘密とは?
ル・レクチェの美味しさを表現するのはなかなか難しいですが、「桃とラ・フランスを足して2で割ったような感じ」「箱を開けた時から漂う濃厚な香りが素晴らしい!」「こんなに美味しい洋梨は食べたことない」などと絶賛されています。
糖度16度以上の甘さ、酸味の少なさ、滴るような果汁の量、そして芳醇な香り。
どれをとっても文句のつけようがない美味しさです。
メルティング質と呼ばれる、舌の上でとろけるような果肉の柔らかい食感がさらに美味しさを引き立てます。
大きさにばらつきがあるものの、味に影響はありません。
ル・レクチェの旬の時期
ル・レクチェは10月中旬~11月に収穫されます。
収穫時には皮は緑色をしています。新潟ではル・レクチェの品質を均一にするために「出荷解禁日」を決めていて、11月下旬から1月初めまでのほんのわずかな期間だけ出荷されていきます。
出荷時にはル・レクチェは9割ほど追熟された状態のものが主流です。もうかなり黄色くなっているはずですね。
ル・レクチェの旬は、そのまま手に入る時期という事になります。
ル・レクチェの食べ頃の見分け方
ル・レクチェの食べ頃は以下の4つの点で見分けることができます。
①皮が完熟したバナナのような色になり、黒い斑点がある
②鼻を近づけなくても甘い香りが漂ってくる
③果実の上部とお尻を押してと凹むような感触があり、中央部分でも柔らかさを感じる
④軸(木の部分)が枯れ枝のようになる
これらの見分け方はル・レクチェの包装にも表示されているので忘れてしまっても大丈夫ですよ。
ただ「弾力がある」と書かれていることが多いですが、弾力というより③のように凹むとか潰れるといった表現の方が正しいかもしれません。
ル・レクチェの保存方法
ル・レクチェは常温(約20度)に置いておくとどんどん追熟してしまいます。
完熟前であれば冷蔵庫に「包装」を取らずに入れて保管しましょう。この包装には穴が開いていて、水分の蒸発を防ぎながら果実が呼吸できるようになっています。
なお、自宅での追熟の際も包装はつけたままにしておきましょう。
完熟してしまうと日持ちがしないのでなるべく早く食べるのがおすすめです。また、ひと口大にカットして保存袋に入れて冷凍しても美味しく食べることができます。
これからのル・レクチェに期待大
通販でも予約だけでほぼ売り切れてしまうというル・レクチェ。
なかなか手にする機会はありませんが、「洋梨ってこんな味」という概念を気持ちよく壊してくれることは間違いありません。
もっともっとメジャーなフルーツとして食卓に並ぶ日が来て欲しいですね。