人気の洋梨「ラ・フランス」と「ル・レクチェ」その違いとは?

人気の洋梨「ラ・フランス」と「ル・レクチェ」その違いとは?
最近はスーパーなどでもよく見かけるようになった西洋梨(洋梨)。
代表格と言えば「ラ・フランス」ですが、「幻の洋梨」と呼ばれる「ル・レクチェ」もその美味しさと希少さで人気が高まっています。
どちらもフランスからやってきた洋梨ですが、ではどんなところに違いがあるのでしょうか。

今回は味や香りなどの他、産地や歴史など様々な違いをご紹介していきます。

ラ・フランスとル・レクチェの生産量はどのくらい?

農林水産省の『平成30年(2018年)産果樹生産出荷統計』によると、洋梨の出荷量は28,900トンとなっています。
生産面積にすると1,349.4ヘクタールです。この数字だけでは良く分からないかもしれませんが、りんごの「ふじ」の生産面積18,223ヘクタールと比較するととても少ないことが分かります。

洋梨の中で見るとラ・フランスの生産面積が全体の64.3%を占めており、「洋梨といえばラ・フランス」と言われるのも生産量によるものでしょう。
ル・レクチェは第2位となっていますが、9.7%と1割にも満たない状態です。

しかし、ル・レクチェはその美味しさから生産量がぐっと増えている品種ですので、今後はもっとポピュラーな果物になって行く事でしょう。

名前の由来とその歴史

名前の由来とその歴史

ラ・フランスもル・レクチェもフランスが原産の洋梨です。
ラ・フランスは1864年にクロード・ブランシェという人が発見し、その美味しさからまさにフランスを代表する味だ!として「ラ・フランス」と名付けたようです。ただ、この呼び名は日本独自のもので、フランスでは発見者の名前がそのまま品種名となっています。

一方のル・レクチェはフランスのオルレアンという街で作られました。
バートレットとフォルチュネという品種を交配して作られたと言われていますが、遺伝子鑑定によりバートレットとの親子関係はないと判明したそうです。ル・レクチェという名前は17世紀に活躍した果樹園芸家であり宮廷にも使えていたル・レクチェエ氏にちなんで1889年に付けられました。

洋梨は病気に弱く、花が咲いてから実が成るまでに時間が長くかかります。
また、樹上で熟さないという特徴から「手間のかかる果物」として、発祥の地フランスでは現在はほとんど栽培されていません。ラ・フランスに至っては1900年代初頭に絶滅したと言われています。

ラ・フランスの生産No1は山形県

ラ・フランスの生産が最も盛んなのは山形県でそのシェアは84.7%と圧倒的です。ではなぜ山形県でこれほどラ・フランスの栽培が盛んになったのでしょうか。

ラ・フランスは1903年(明治36年)に静岡県の農商務省農事試験場園芸試験地へ既に栽培されていたバートレットという品種の授粉用として導入されました。
バートレットは主に加工用の品種で、この時には洋梨を生で食べるという習慣はなかったようです。洋梨は樹上で完熟しないという特性を知らなかった人々はもぎたてのラ・フランスを「硬くてまずい」と思ったに違いありません。

しかし、落ちていたラ・フランスの実から香りがしていたので食べたら全く別物になっていてびっくりしたのではないでしょうか。「収穫した後に少し置いてから食べるものだと気づいた」という記録が残っているそうなので、その状況が目に浮かぶようですね。

山形県には明治8年(1875年)にバートレットの栽培が始まっていたという説があるそうです。また樹齢が100年ほどのラ・フランスの木があるので、かなり早い段階で伝わっていたことが分かります。しかし、ラ・フランスが生で食べられるようになったのは昭和60年代(1980年代半ば頃)と時間が経ってからのことです。
この間の山形県の人々の努力が実を結び、グルメブームに乗ってラ・フランスは一気にその名を知られるようになりました。

ル・レクチェの生産No1は新潟県

ル・レクチェの生産No1は新潟県

ル・レクチェの生産の80.8%が新潟県です。全体で1割に満たない中でのこの割合は、ほとんどが新潟県産と言っていいほどではないでしょうか。

このル・レクチェを日本に持ち込んだのは現在の新潟市南区に住んでいた小池左右吉という人物です。彼が1902年(明治35年)にウラジオストクへ旅行した時にル・レクチェと出会い、その翌年にフランスのオルレアンから苗を取り寄せたことから新潟で栽培が始まりました。

最初は小池さんが個人で栽培法を確立し近隣に広めていきました。
新潟市南区はラ・フランスの栽培に適した気候や土壌であったため、官民が協力しル・レクチェの栽培に力を入れたことによって新潟県の特産果実となりました。現在では長野や福島などでも栽培されています。

生産量が増えたとはいえまだまだ少なく「幻の洋梨」という名前は健在です。その他にもその美味しさから「西洋梨の貴婦人」「妖艶の果実」とも呼ばれています。

洋梨の追熟

先ほどもちょっとお話しましたが、洋梨は収穫後に常温で保存している間に熟していくという特徴があります。
この過程を追熟と言います。品種によってその期間は異なり、ラ・フランスだと10日から2週間、ル・レクチェはなんと40~45日もかかります。洋梨は熟すほど果実が傷みやすくなりますので、きちんと追熟するためのスペースも必要になってきます。

実が成るまでに時間がかかり、病気になりやすいうえに収穫してからも管理が大変・・・となれば栽培する農家の方たちは本当に大変ですよね。

もうひとつ、洋梨の手間になるのが「食べ頃がいつになるのか分かりづらい」という点です。大体の追熟期間は分かっていても、温度や湿度などでひとつひとつの熟し具合は異なります。

ル・レクチェは収穫した時は緑色ですが、熟していくと皮の色が鮮やかな黄色に変わってきます。その後熟れたバナナのように黒い斑点が現れた頃が食べ頃の目安のひとつになっています。
一方でラ・フランスは最初から最後まで黄緑色のまま。ル・レクチェよりも判断が難しい、というよりル・レクチェは洋梨の中では判断しやすい品種と言った方がいいでしょう。

農家の方もなるべく美味しい時期に食べてもらいたいという気持ちがありますので、収穫した後すぐに2~5度の保冷庫に保管しています。温度を下げることで洋梨が追熟するのを止めることができ、大量の洋梨の追熟開始日を揃えることができるようになるのです。
この低温で保管することを「予冷」と呼んでいます。

予冷という工程を経た洋梨は一定に保たれた常温で追熟され、食べ頃まであと少しという時期に揃って出荷されていきます。

あなたはラ・フランス派?ル・レクチェ派?

あなたはラ・フランス派?ル・レクチェ派?

ラ・フランスとル・レクチェでは見かけや味も異なります。
どちらも追熟の過程でとろりとした食感になり甘みも強くなります。果汁も多いですがとろみがでるので「桃のような」と形容するのがいいかもしれません。

ただ、ラ・フランスは適度な酸味があるので爽やかな甘さになり、ル・レクチェは酸味がほとんどないのでこっくりとした濃厚な甘さとなります。またル・レクチェは果肉がよりなめらかな食感となり、芳醇な香りがあります。爽やかさが欲しい方にはラ・フランスが、濃厚な甘みが好み中谷はル・レクチェがおすすめです。

希少価値という点ではル・レクチェの方が上なので、お値段はル・レクチェの方が高めになります。
また見た目がちょっとごついラ・フランスに比べ、皮がなめらかで色鮮やかな黄色が美しいル・レクチェは贈答用としても用いられることが多くなっています(色が黄色なのは食べ頃近くに出荷されているからですね)。

旬の時期はいつ頃?

ラ・フランスもル・レクチェも収穫は秋に行われます。ラ・フランスは10~11月に収穫され、12月頃まで出荷されますが、旬の時期は最盛期の11月と言っていいでしょう。ル・レクチェの収穫は毎年10月中旬頃で、11月下旬から12月にかけて出荷されていきます。

山形県と新潟県では品質を一定に保つためそれぞれ「販売開始基準日」と「出荷解禁日」を設けています。ラ・フランスの販売開始基準日はお店などでお客さんが買った時に美味しい状態を保証できる日で、ル・レクチェの出荷解禁日はその名前のとおり出荷ができる最初の日です。

どちらも生産者のもとで出荷できるぎりぎりのところまで追熟させています。名前は異なりますが、購入後(通販の場合は到着後)は手にした人自身が追熟する必要があるため、その期間が分かりやすく短くて済むようにという配慮なのです。
ただし、これはすべての生産者に強制している訳でありませんので、中には「あれ?」と思うものがある可能性は否定できません。

美味しい洋梨の購入方法

美味しい洋梨の購入方法

比較的簡単に手に入るのはラ・フランスで、旬の時期になるとスーパーなどで購入できます。
山形県産のラ・フランスの中にはGIマークと呼ばれるものが付いているものがあり、これは山形県が国の認定を受けて品質を保証しているという印です。このマークがついているものは「山形ラ・フランス」という名前で販売されていますが、歴史が浅いため全ての生産者がこのシステムに加入しているという訳ではありません。

ル・レクチェに関してはそもそもの生産量が少ないため、生産地以外ではなかなか手に入れることは難しいでしょう。多くはインターネットなどの通販で販売されており、予約だけで完売することもあります。
ラ・フランスについても、スーパーなどではちょっと心配・・・という方は通販を利用するのが便利です。果物の通販は農協や生産者が直接販売に関わっているので、きちんと管理されたものを手に入れられるという安心感があります。

美味しい洋梨を食べてみよう!

「洋梨はあまり食べない」という人も少なくないようです。日本には美味しい和梨がたくさんありますので、その味に慣れ親しんでいると「梨っぽくない」とか「食べたら美味しくなかった」ということがあるのかもしれません。
しかし、「本当に美味しいものを食べると認識が全く変わってしまう」ということは良くあります。
丹精込めて育てられた、顔の見えるラ・フランスやル・レクチェを一度食べたら病みつきになるかもしれませんよ?

美味しい食べ頃の見分け方はこちらのページをご覧ください。